渋谷。
そこは流行と人が行きかう場所。
様々な人々と、その人の思考が交錯する。
俺たちは、誰にも認識されずに死神のゲームを続ける。
それは、地球温暖化で騒がれるある日の事……。

 

 

heat wave

 

 

「……暑い。」

照りつける太陽。
蜃気楼のような町並み。
光を反射するアスファルト。

俺が今いるスクランブル交差点は、まさしく灼熱の拷問だった。

本来ならば近くのビルに入り、普段なら嫌悪するクーラーの効き過ぎた店で涼みたいところだが、壁がそれを邪魔する。
しかも解除条件がピグノイズを倒せというものだ。

見つからない焦りと暑さによる苛立ちのせいで、俺はスキャンに集中することができないでいた。

「……ネク君。あんまり暑い暑いって言ってるともっと暑くなっちゃうよ?」
「言っても言わなくてもかわんねぇよ。」

普段は余裕をみせているヨシュアだったが、さすがに暑いらしくその表情には余裕がない。
いつもならボタンをかけてる上着も、今は肌蹴ている。
せめて直射日光から避けるかのように、信号機の影に何とか体を重ねていた。
俺も近くの電灯でヨシュアと同じように影に体を重ねていた。

「それにしても……ネク君のそれって、見てるこっちも暑くなりそうだよね。」
「……それって何だよ。」
「ネク君の上着だよ。よくそれでこの暑さに耐えられるよね」

ヨシュアのいう上着。
確かに普段だったら顔も隠せてあまりまわりから表情を見られずにすんで楽だが、今回は別。
ただでさえこの暑いなかで顔を半分も隠しているなど、軽く蒸されて余計に暑い。
いつも耳にかけているヘッドフォンでさえ蒸すから外しているのに、さすがに上着だけはどうしたらいいのかわからずにそのままになっていた。

「いっそのこと脱いじゃえばいいんじゃない?どうせ周りの人には見えないんだし。」

死神のゲームに参加している俺たちはUGという別次元にいてRGの人間には姿が見えない。
たとえノイズに襲われても、誰も助けてはくれないし誰も気づいてくれない。
そんなことは俺だってすでに承知だ。
でも、だからって脱げるわけがない。

「とにかく、はやくピグノイズを見つけよう。このままじゃあ死んでるのにまた死んじまう。」
「……っち。わかったよ、ネク君。」

……何だ。今舌打ちが聞こえたぞ。
とにかく、早く見つけてどこかの建物の中に入らなければ……っ!!

 

 

10分後

 

「……おかしい。何でこんなに探してるのに見つからないんだ……?」
「ねーねーネク君〜。いい加減上着脱いじゃえば〜?もうあれから10分経ってるんだよ。」
「脱がないっ!!!ていうか、おまえも探してるのかっ!?真面目にっ!!」

俺が何をいってもあっさりと流してしまい、結局は一人でピクトノイズを探す羽目になってしまった。
それにしてもおかしい。
参加者はもう俺たちだけだから誰か他の参加者がクリアーしているはずが無い。
俺が解除条件を聞き間違えたのか?
いや、あの時は俺と一緒にヨシュアも聞いていたから間違いはないはずだ。
いくらなんでも間違ってたらヨシュアのほうから何かいってくるはずだ。
それとも……これもあのオブジェ死神の罠なのか?

駄目だ。段々頭がくらくらしてきた。

ヨシュアの言うとおりに上着を脱いでしまおうか―――――――

 

 

 

 

「てめぇら!!!ゼタ遅ぇんだよっ!!!いつまで待たせる気だ、このヘクトパスカル共がっ!!」

服の裾を持ち脱ごうとしたその時、一度聞けば印象に残りすぎるあの声が聞こえてきた。
オブジェ死神こと南師。
だが今のそいつは普段の見下した余裕もないくらいに汗だくで息切れしている。
もしかして、こいつ、ここまで走ってきたのか……?

「なっ……オブジェ死神っ!?何でここにいるんだっ!!」
「てめぇがいつまでたってもバカなことをやってるからだろ!!俺を楽しませてくれるんじゃねぇのか?ヨクトグラム共!!」

ゲームマスターが直々に来るこの状況もおかしいが、何故あいつがここまで機嫌が悪いのかがわからない。
でも、ただでさえ今は精神的にも疲労しているのにこいつと戦闘になると厄介だ。
ヨシュアをつれて早くあそこの通りに逃げないと―――――――ってあれ。

 

壁が解除されてる。
いつの間にっ!?

 

「お前が壁を解除したのか!?」
「ああっ?何言ってやがる。とっくに解除されるだろうがよっ!!」
「なっ!?」

理解できない状況に頭が混乱している。

「……ゼタマヌケ。大切なパートナーサマが何したのか知らねぇのか?」
「えっ……」

南師にそう言われ、俺はあることを思い出す。
俺がピクトノイズを探してる間、ケータイをいじくってばっかりだったヨシュア。
俺が急かしても全く動こうとしないヨシュア。

そしてなにより、さっきからやたらと不快な発言ばかりするヨシュア。

信じたくは無かったが、俺の中にあるひとつの答えが浮かび、ヨシュアのほうを向く。

「あのさ、ヨシュア。」
「何だい。ネク君?」
「ピクトノイズって……お前が倒した?」
「ピクトノイズ……?ああ、あの子ブタのやつね。倒しちゃったけど?」

いやな予感がする。
いや、少なくとも俺はかなりの可能性があると踏んでる。

「……いつ倒した?」
「うーん。よく覚えてないけど、1時間前くらいかなぁ」

ちょ…
ちょっと待て。
じゃあ…今までの俺の苦労はなんだったんだ。

「……何でそんなことしたんだ、ヨシュア!!」
「だって、ネク君が上着脱ぐの激写できるかなぁ〜って思ってたから、ちょっといじわるしちゃった♪」
「俺は熱中症で死に掛けたんだぞっ!!たかが服ぐらいでなんでそんなことになるんだっ!!!」

「だって、ネク君のそんな写真がとれたら僕はうれしいし、そこの死神君だって同じだと思うけどなぁ……」
「なっ……//// んな訳ねぇだろうが!!ヘクトパスカルが!!!」

何だ。今の間は。
しかも何で顔赤いんだよオブジェ死神。

というか……このまま二人を置いていってもいいんじゃないか?
壁も解除されたし、適当にビルに入るか。
汗もかいたし、変態どもがいない間に服も買っておこう。
俺はヨシュアと南師が喋っている横を通り、とっととビルの中に入った。

 

 

ああ。

やっぱりヨシュアって、信用できないな。

今度からは、2m位離れてよう。

危ないからな。俺が

 

 

 

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あとがき

強制終了。駄文。
軽くヨシュア→ネク←南師ですが、ギャグで済まされる程度で終わったかな?

実際に渋谷を歩いた感想としては人が多い。
そしてビルの中がありえないくらい寒い。
タワレコとUMXにはいったけど109には行きませんでした。
ギャル怖いし☆個人的に☆
嫌いって訳ではないんだが……軽い恐怖対象。

最初ピグノイズの事をずっと「ピクノイズ」だと思ってたんですよ。しかもその後「ピクトノイズ」にさらに脳内変換。

 

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