※死神は年をとらないという設定。
river
「――――で、南師に教わった所が大当たり。もちろん、ちゃんと解けたから」
「ったりめぇだ。この俺が直々に教えたんだ。間違える訳がねぇだろ」
「ははは…確かに。数学だけは南師を頼りにしてるよ」
「”だけ”は余計だ、ヘクトパスカルが」
人には見えないオブジェの上。
そこで俺たちはいつも、こうして互いに体を寄せ合う。
座りやすいように、てっぺんを少し平らにして、
それでも狭いからと、俺の膝の上に音操は座る。
音操を落とさないようにと、俺は音操の腰に腕を引き寄せる。
互いの温もりを感じていられる距離。
他愛もない会話で、それでも、この時間が堪らなくて、
でも、音操の顔が時折暗く沈む。
「…どうした、音操」
「……高校、決まったんだ。結構良いところ」
「へぇ…」
「渋谷だから、高校入ってもお前に会うこと出来るし」
「良かったじゃねぇか」
音操と出会って半年弱
変化のないUGと変わり続けるRG
別々の次元にいる俺たち
俺にとって時間の流れというのは関係のないもの
でも音操は――――
「どうした?今日はやけに元気がねぇじゃねぇかよ」
「…別に」
「…ったく。しゃーねぇな」
こういう時の音操には言葉を与えることはせず、黙って抱きしめる。
トクトクと音操の心臓の音が伝わってくる。
暖かい…
「なぁ、南師」
「どうした」
苦しかったか?
そう思って手を緩めた。
音操は頭を上に上げて、俺を上目づかいで見上げる。
何かを言おうとして口を開けて、でも閉じる。
開ける、閉じる。その繰り返し。
しばらく沈黙が続いて、何かを決心したか、音操は口を開いた。
「俺が高校卒業……嫌、18歳になったらさ。俺の事……死神にしてくれないか…?」
「っ!?……音操の言う冗談は笑えねぇんだよ」
「冗談じゃない。本気だ」
さっきまでうじうじしていたとは思えないくらい真剣な眼。
わかってる
こいつは、冗談なんか言うやつじゃないって事くらい
初めて音操を抱きしめたとき、とても小さいように感じだ。
会うたびに音操を抱きしめてれば、音操の成長なんて手にとるようにわかる。
今はまだ成長期だ。
もしかしたら、音操が俺と同い年になったら俺を越すかもしれない。
いくらなんでもそれは無理か。
俺は、何年経っても今のままで
何年経っても、18で時が止まっている。
でも音操は?
「馬鹿な事言うんじゃねぇよ。俺に勝ってまで生き返ったのに、それをなかったことにするつもりか?」
「だって…」
「余計な事は考えるな」
「でも――――――っ!?」
折れない音操の口を俺の口で塞ぐ。
必死に俺から音操は離れようとするが、俺が腰をしっかりつかんでいるから無理な話。
舌を入れて、音操の舌を絡め取ると、音操の口から声が漏れる。
「っは……ぁ、……ズルい」
「もうそれ以上喋んな」
誤魔化すように音操の頭を俺の胸に引き寄せる。
音操はもう、それ以上なにも言わなかった。
答えたくなかった?
いや、俺にもよくわかんねぇ
間違えたら消しゴムで消せばいいだけの計算式とは違う。
ひとつ間違えれば
0ではない
何もかもがなくなる、虚無。
あと3年
タイムリミットまでに
俺はこの計算式の答えを導き出すことが出来るのだろうか
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あとがき
どうしてこの二人のやつを書くときはこんな悲恋ばっかりなんだろうか…。
ハッピーなヤツも書いてあげたいけれど先にこういうのばっかりが浮かんでしまう。