何がきっかけになるか

計算できる訳がない

 

 

 








love at first sight

 

 

 

 

 

 

「……」

 

空は晴天
熱くもなく寒くもない
いつもより人の通りも少ないし
ここだけだったらゼタ最高だった。

唯一気に入らないこと
今日のオブジェの材料が最悪だって事。

 

いつもの場所に材料を取りに行くとそこには何も無く
近くにいた死神に問い詰めたら虚西さんに強制撤去されたとかで

それで気分ゼタ最悪。

 

それでも材料探し出して
それでもいい材料はなくて
怒りの矛先を全てオブジェに向けたら

 

 

 

 

逆三角形のオブジェが出来た。

 

 

 



「……ゼタマズイな」

 

普通なら倒れるであろう逆三角形のオブジェが一向に倒れない。
重力を無視したオブジェ。
どんなに計算したってこんなのできねぇよ。

 

「これはこれで良いが、上に乗れねぇ」

 

それが一番肝心なところだ。
オブジェの上に座ってヨクトグラム達を見るのが日課なのに
新しいオブジェを作るにも材料はこれだけ
作り直すにも崩すのは危険だ

 

「あーくそっ!! とっとと倒れちまえっ!! 他の参加者なんかクラッシュだ!!」

「あっ、オブジェ死神」

「っ!? おま……ヘクトパスカルっ!?」

 

オブジェばかりに気を取られていたせいで、背後から近づく気配に全く気が付かなかった。
桜庭音操。
あのコンポーザーとパートナーを組む前回のゲームの生き残り。
あの現場にいた奴。

 

 

ドキッ

 

 

心臓の音が跳ねた

 

 

「あいつはどうした」

「……ヨシュアに何のようだ」

「ちっ、どうやら近くにいないようだな」

「……っ!?」

「別に独りになったからって襲いやしねぇよ。 まだ準備もできてねぇし」

 

パートナーが消滅すればそれに連なって消える。
それがこのゲームのルール。
だからこいつに消えられたら困る。ただそれだけ。

それだけのはずなのに

 

ドキッ

 

何でまだ心臓が早いんだ。

 

 

 

向こうはまだ俺を警戒してるが、俺はどうこうするつもりはねぇし。
そのまま無視してオブジェのほうに視線を戻すと――――

 

 

 

 

俺の帽子が飛ぶくらいの風が吹いた。

そして

あのオブジェがグラつき、崩れ始めた

 

 

 

桜庭音操のいる方向に――――

 

 

 

風のせいで目を閉じてるせいで、まだあいつはオブジェに気付いていない。

 

 

 

「くそっ!!」

 

 

頭で計算する前に身体が勝手に動いた。

桜庭音操を抱き上げ、こっちに崩れてくるオブジェの隙間に身体を滑らせた。

激しい音と僅かな振動にさすがにRGの奴らも足を止めるが、すぐにまた動き始める。

 

 

「うっ…くそっ、服が汚れちまった」

コンクリートで擦れた部分は土ぼこりが付き汚れてしまったが、切れはしなかった。
とりあえず、心配事の一つは解消。
そして……

「おい、大丈夫かよ」

俺の腕のなかにいる桜庭音操を見た。
顔は俺の胸に押し付けられれるせいでよく見えないが、体は震えている。
……
ふと、今の自分の体制を冷静に考えてみた。
桜庭音操が下にいて、顔を俺の胸に押し付け、それを俺が上から見ている。

ということは……

今俺はこいつを押し倒しているような格好になっている計算が出た。

 

「みっ……南師……?」
「っ!!! おっ……脅かすんじゃねぇ!!」

計算途中に話しかけられゼタ驚いた。
いきなり話しかけんじゃねぇよ!! 計算中なんだよ!!
でも、

この安堵感は何だ?

こいつはコンポーザーのパートナーで消えられたら困るから?

何か違う

 

 

そんなことを意識し始めたら、こいつの顔が直視できなくなった
今の俺、ゼタだせぇ!!

 

 

「……っ、苦……しい」
「あっ…悪ぃ」

いつの間にかこいつを強く抱き寄せてたらしい
腕の中でもぞもぞと動き出した。
そのせいでうっかりこいつの顔を見てしまった。

 

ドキッ

 

 

また心臓の音が跳ねた

 

 

「だっ……大丈夫……なのか?」
「あっ……平気。 まだ、驚いてるけど……」
「そっ……そうかよ」

 

変な空気
変な会話
変な俺たち

この雰囲気

ゼタ意味不明っ!!!

 

「……くそっ!!」

いつまでもこうしていられるわけでもなく、俺は桜庭ごと立ち上がった。
腰を持ち、一緒に起き上がった。
抵抗は、されなかった

 

「あっ…」
「早くあいつのとこに帰りやがれ。んで、今のことは忘れろっ!!」

自分でも理解不能の行動
勝手に動いた体
止まらない鼓動とは別の鼓動
さっさと帰って忘れたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ありが…とう」

 

桜庭の口から  小さく
でも確かに聞こえた言葉
何でだ
何でこんなに

 

 

俺は喜んでんだ

 

「かっ…勘違いすんじぇねーよっ!!! てめぇに消滅されたらこっちが困るんだっ!!」

自分でもわかる、焦っている自分の声
ゼタだせぇと思っていても、治らなかった
俺は桜庭に背を向けて飛び去った

 

 

 

ちくしょう
何でこんなに変になるのか、わかっちまったじぇねーか
おれは
あいつのことを――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……南師」

目の前から早々に立ち去ってしまった彼の名前をぼそりと呟いた
なぜだろう
何故この名前を言うとこんなにも胸の鼓動が早くなるのは―――――

 

「俺……あいつのことが――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんなにも胸が焦がれる程に、好きになった』

 

 

 

 

 

 

 


love at first sight:一目ぼれ。

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あとがき

南音でほのぼのな初々しいような恋話。
ともに反応がピュア過ぎて砂掃きそうです(笑)

南師は無自覚だったのが今回の事件で好きだと気づき、音操は南師に助けてもらって一目ぼれ。
さながら少女漫画の王道路線。

 

 

追伸。
2008年6月に執筆し、2009年10月に発掘しました(汗)
あれ?完成してたのに何故にアップしてなかったのだろうか…?
そんな作品が実はゴロゴロと存在しています…(汗)

やっぱり南音も好きだぁぁぁぁぁ!!
原点回帰っ!!

 

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