俺たちに永遠なんてあるのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

Crawlers

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「永遠の愛って、何なんだろうな」

「エッ?」

 

 

いつものシブヤ

いつものオブジェの上

いつもの時間

いつもの光景

 

そして、いつもと違う、彼の言葉

 

 

「何っ!?それって……猩チャンからの愛の告白っ!?」

「4ねっ!!」

「……じゃあ、何でそんな事聞いてキタノ」

 

 

いつもと同じものの中に囲まれながらも

彼だけは

会うたびに何かが変わっていっている

それは、ほんの些細なことを含めて

例えば

においとか

雰囲気とか

俺に見せる顔とか

 

 

「永遠っていうことは、俺が死んでも、お前が死んでも、続くってことだよな」

「縁起でも無い事言わないデヨ〜」

「俺たちは死神だが、“死なない”訳じゃねぇ。参加者の命を喰らい、他人を押しのけねぇと生きていけない」

「……」

「なぁ、狩谷」

 

 

彼に腕を引かれ

耳に彼の口が触れる位の距離で近づく

 

 

「もし、俺が消滅しても、お前は俺を覚えていてくれるか?」

「……」

「お前の中で、俺が生きてる限り、“永遠”になれると思うんだ」

 

 

俺の腕を握り締める彼の手が震えているように感じたのは

彼があまりにいつもと同じでないから

 

 

「ナァ、猩。もし猩が消滅しちゃったら、俺も、一緒に消えちゃダメ?」

「駄目だ」

「何デ?」

「そしたら“永遠”じゃ無くなるだろ」

「デモ、猩のいない世界に、1人でいるのはヤダ」

「でも……」

「“永遠”なんで言葉、未来に何も見えない奴の言う慰めの言葉。俺にとっては、今のこの時も感じる、“いつも通り”が全てダヨ」

 

 

彼の腕を掴み、俺の胸の中へと包み込む

時々、こうして彼は不安に飲み込まれる時がある

それは幹部としての重圧なのか

コンポーザーになるという、自らの夢に押しつぶされそうになるのか

このシブヤのせいなのか

いや、ちがう

 

 

「俺は“永遠”っていう長い時間を想像することはデキナイ。こうして今日の君を感じて、また、明日の君を明日の俺が感じる。その繰り返し」

「短いんだな」

「ハハハッ…。俺たち下っ端は幹部サマよりも死亡率は高いですカラネ」

「……」

「だから俺たちは、明日ともしれないこの1日が、“永遠”なのかもしれない」

 

 

そう簡単に消滅はしないけど

こうでも言わないとこのオヒメサマは納得しないから

いつもこう言えば、彼は震えて俺の胸に顔を埋める

 

「駄目だ。お前が消えるのは駄目だ……」

「ウン。俺だって嫌ダヨ。だから俺は何をしてでも生き続ケルヨ」

「本当に?」

「ホントホント。猩の望むように、俺はずっとお前の事だけを考えて、感じて、生きていくカラ」

 

 

顔を俺の方に向け、安心したようだけれども、それでも悲しそうな笑顔を向ける

そんな顔を見たくなくて、後ろから手を添えて胸に押し付けた

弱弱しく服を掴む右腕を、俺は忌々しく見つめる

右腕の“黒”が浸蝕してきている

それは毎日ではないけれど、定期的にその“黒”は彼の心を蝕む

彼は心の蝕みを阻止するかわりに、記憶の蝕みを許した

 

今彼が話したこと

彼が抱える不安

恐怖

それらを何度も彼は繰り返し、俺はそれを慰める

いつもと同じ言葉、行動で、彼の不安を取り除く

右腕の“黒”が完全に右腕を浸蝕した頃になると

毎日、同じ恐怖に怯えた

それこそ、彼にとってはそれが“永遠”なのだ

その“永遠”に恐怖し、“永遠”の愛に焦がれる

 

 

“永遠”

それは縛る言葉

今の俺には、君を俺の中だけの存在にすることでしか救えない

だから、もう少し待って

もう少し頑張って

いつか必ず

俺が君を

“永遠”から救い出すから―――――

 

 

 

 

----------
あとがき

映画「スカイ・クロラ」を見て、その感動に浸っている間に書きました。
主題歌聞いてるだけで泣けてくる。

要約すると、南師の右腕に巣食う禁断化の力が南師を浸蝕していっている影響で記憶があやふやになってしまっているので、その不安に押しつぶされそうになっている南師を狩谷が救おうとする……みたいな感じです。

あくまでスカイ・クロラっぽくしたというだけで本編と関係ありません。ましてやネタバレは一切ないです。

 

「永遠」と「死」がキーワード。

 

back