※義務教育修了者以上対象となります。
※該当されない方は閲覧しないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

timing

 

 

 

 

 

 

 

「拘輝……」

 

誰もいない、風の音しかしない場所。
ポークシティの屋上で一言呟く。
たったこれだけ。
この名前を呼ぶだけに苦労している自分がいる。

はっきりいってゼタまぬけ。

 

 

気づいたのはつい最近。
狩谷と何というか……アレな関係になってから狩谷はプライベートでは俺のことを「猩」と呼んだ。
たまにふざけて「猩チャン」とかいうときがあるがあれは無しだ。
とにかく、狩谷は俺のことを「猩」と呼ぶ。
だが俺は、狩谷のことを「テメェ」か「あんた」か「おい」。
固有名詞で呼ぶとしても「狩谷」。

付き合い始めてそこそこ経つのに、一回も名前で呼んだことのない自分に気づいた。

きっかけは、狩谷がいつも一緒につるんでいる八代とかいう女の一言。

「てっきり名前を呼ぶ合う位の仲になったのかと思った」

なんでこいつが俺と狩谷の関係を知っているのか気になったが、今はそこじゃない。
他の奴に指摘されたのがゼタむかつく。

だから決めた。
今日こそは狩谷を「拘輝」と呼んでやるとっ!!

 

 

 

 

 

 

 

「オハヨー猩チャン♪ 今日も一日お仕事頑張りましょうネvv」

いつものように狩谷――――いや、拘輝が俺の前に現れる。
今だ。
朝の挨拶と一緒にこいつの名前を言うんだ。

 

「こっ……こっ……こっ……」

「んっ? ドウカシタ?」

「こっ……

 

 

 

 

――――――――コサインっ!! タンジェントぉ!!」

「うおっ!! いきなり何するノっ!?」

 

…しくじった。
何でだ、何で一人だと言えるのに今この時に言えないっ!!
しかも技まで仕掛けちまったしっ!!
今の俺、ゼタまぬけ。

 

 

 

 

 

 

 

昼。
ゲームを開始して半分が過ぎた頃、また狩――――拘輝に出くわした。
仕事中だから、あの八代っていう女も一緒にいる。
だが、今日は絶対に呼ぶと誓った!!
他の奴がいようとかまうもんか!!(虚西サンは別だが……)

 

「おい」

俺から呼び止める。

「ん? 何デスカ?」

「こ……

 

 

 

 

 

――――――こないだモルコ前のオブジェを片付けたのはテメェらだろっ!!」

「エー、だって虚西サンからの命令だったシ…常識的に考えても南師よりも上司の言う事聞かないと駄目デショ」

「そうですよー」

「常識なんてゴミだ。クラシュッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

…何でこうもうまくいかないんだ。
一回、名前を言うだけじゃねぇか。
今日3回目の、ゼタまぬけ。

「拘輝…」

ポークシティの屋上で、また一人風に消えそうなくらい小さな声で練習。
ほら、普通に言えるじゃねぇか。
あーくそっ。やっぱ今日言うのは諦めるか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――何?猩」

「っ!!!!」

 

 

心臓が、これでもかという程跳ねた。
あまりの驚きで声が出なかった。
振り返ると、そこにいたのは狩谷――――拘輝。

 

「ネェ、今俺の事呼んだでショ?」

「ばっ……誰がテメェの事なんか呼ぶかっ!! 仕事はどうした、仕事はっ!!」

「ついさっきミッションクリアされたから、俺たちの仕事はもう終わりマシタヨ」

 

……いつの間に終わってたんだ。
こいつの事ばかり考えすぎて気づかなかった――――って!!
何で俺の頭の中がこいつの事で容量とられなきゃいけねぇんだ!!
こいつのことなんかヨクトグラムだ!!

 

「仕事が終わったならさっさと帰りやがれ。俺への報告はもう終わってるだろ」

「ウーン…確かに報告の為に来たんだケド…。他にも用事がデキチャッタ」

「…さっさと言いやがれ」

 

 

 

 

 

 

 

「ヤりたくなっちゃっタ♪」

「なっ////!!!」

 

こいつは、何でそんなこっ恥ずかしいことを平気で言えるんだ!?
慌てる俺をよそに俺のすぐ目の前にまで狩谷は迫った。
俺の顔を包み込むように手を添えて、耳に近づいて――――

 

 

「お前の部屋に行こ――――猩」

「っ!!////」

 

どうもこいつにこういう場面で名前を呼ばれる事に弱い。
しかも、狩谷は俺がそういうことに弱いという事を知っていてやるからタチが悪い。

そんな状態で、俺が返答できる訳がないっていうことも、もちろんこいつは知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ

それがいつもの流れのように狩谷に部屋に連れて行かれ、ベッドに押し倒される。
もう、この行為も何回目になるのか。
んな事いちいち数えてる訳もなく。
そんなくだらない事はとっとと頭の片隅から消去して、今の行為に没頭する。

 

「ん…」

「猩…」

 

狩谷と繋がる唇。
やがてそれは唇だけでなく舌も絡み合う。
絡み合う音が、俺の頭の中で響きあう。
その音を出してるのは俺か、それとも狩谷か。
腕を狩谷の首に回し、さらに深く繋がる。

 

「ふっ…ぁ…かり、や……」

 

苦しくなってきて狩谷の服を掴むと、口を離した。
俺が肩で息をしている間に、口から首、そして服のボタンを外して、胸に舌を這わす。
最初はくすぐったくもどかしかった感覚も、狩谷が胸の突起を口に含んだ瞬間に別のものにかわって体に流れ込んできた。

 

「ぁあっ//// ってめ……そこばっかり舐めてるんじゃ、ねぇよ…っ!!」

「だって…可愛い過ぎるカラ♪」

「何言って――――ひゃんっ////」

 

狩谷に吸い上げられ、油断していた俺の口からは喘ぎ声が大きく部屋に響いた。
狩谷と俺以外誰もいないとわかっていながらも、声が響くのは恥ずかしい。

でも、何かがいつもと違う。
いつもはこんなに前戯ばかりしてこない奴なのに―――

身体中を嘗められてはいるが、肝心な部分には触れてこないこの行為に体が耐えられなくなってきている。
自分で手を伸ばして扱おうとしたら、狩谷によって手を掴まれて上に押さえつけられてしまった。

 

「なっ!? 何す―――っ!!」

「――――――ナァ、“拘輝”って呼ンデ?」

「えっ、ぁあっ////」

 

 

聞き返す前に、狩谷の手が俺のモノを掴み、妨げる。
解放したくても、出来ない。
生理的な涙が俺の頬を伝った。

 

「かっ…かり、やぁ……////」

「拘輝って呼ばないならこのままにしちゃうケド、猩はそれでも平気なのカナ?」

「ゃ…はな、せ… イクっ…////」

「ダーメ。ほら、早く言ッチャエヨ」

 

狩谷の言う通り、全然平気じゃなかった。
むしろ、もうかなりヤバイ。
じわじわと
体が
狩谷を求めて悲鳴を上げる。

 

 

名前を呼ぶ羞恥心など、とっくの昔に無くなっていた。

 

 

 

「こ……うき…」

「ンッ? もう一回言っテ?猩」

「こう…きぃ、こうき……こうきぃっ!!」

「…」

 

 

何度も何度も狩谷の名前を呼び続ける。
あんなに言う事が困難だと諦めていたのに、こうもあっさり言えるものなのか。
あんなに悩んだ俺が馬鹿馬鹿しく思える。こんな状況じゃなかったら―――。

何度も狩谷の名前を呼んでいるにも関わらず、当の本人は何故か固まって全くリアクションをとらない。


「ッ?……拘輝?」

「っえ……、ああっ!! そうだったな……」

「あっ…んんっ//// いきな…り、動かすな……ぁあっ!!」

 

 

再び始まった行為に、先ほどの狩谷の事も飛ぶくらいに
溺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参ッタ」

「はぁ?」

 

事情後、横に座る狩谷が何故か頭を抱えて俺に謝った。
あれから何度もイかされて、全く動けなくなっていた。
そんな中での突然の狩谷からの謝罪。

 

「何がだ」

「何というか…お前から名前を呼ばれてハズカシイ」

「なっ!?//// お前が言えっていったんだろっ!! お前が!!」

「ダッテ…。そもそもは屋上で猩チャンが俺の名前呼んでるカラ勃っちゃったんダモン」

「聞いてたのかよっ!!!」

 

最悪。最悪。最悪!!
まさかアレが聞かれていたなんて、ゼタ最悪!!!

でも待てよ?
俺が「拘輝」って呼ぶと恥ずかしい?

 

 

「拘輝」

「ヘッ!? しっ…猩っ!?」

「拘輝」

「ちょ… 待っ」

「拘輝」

「……スミマセンデシタ」

 

 

我慢させた仕返し。
これは結構使えそう。

 

 

 

 

当分は、俺のほうが狩谷よりも上に立てそうだ。

 

 

----------
あとがき

ここまで細かく裏書いたのはネットでは初めてです。
うーん、微妙な感じだ(汗)

とりあえず「拘輝と呼ぶことを恥ずかしがる南師」が書けてよかったかなと。

 

狩南で裏。明楽さんへ3000hit記念。

 

back