もしかして…

ライバル出現?

 

 

 

 

 

 

Show me the smile !!

 

 

 

 

 

 

 

今日もいつもと同じお仕事開始。
でも、いつもと違うところが一つ。

それは

今日の俺は動物と同伴って事。

 

 

 

「何コレっ!!可愛い〜♪」

「いやサァ……何かお菓子あげたらついてきちゃたんダヨネ」

「えっ……お菓子って犬にあげていいの……?」

 

 

卯月が今抱いているのは白い子犬。
犬種はわからないが、何となく日本犬のどれかのような気がする(あくまで見た目的な感想として)
捨てられたのか、それとも迷子なのかはわからないが俺について来てしまった。

何故か俺はよく犬に懐かれる
はて、それは何故だろう

それが昨日。
で、どうすればいいのかわからずにとりあえず昨日は俺の部屋で面倒を見た。


「でっ? どうすんの?この子」

「それを卯月に相談するために連れてきたんダヨ」

 

 

仕事中に連れて行くわけにはいかないし。
かといって捨てにいくには罪悪感が沸くし……。
いつだったか、こうつぶらな瞳で見つめる犬のCMをどこかでみたような……。

特に“死神はペットを飼ってはいけない”という社内ルールは存在しない。
それでも、こういう仕事柄、命あるものの面倒を見るというのは何だかなぁって。

俺たち死神は参加者の命をもらって生きている。
その命をポイントとして
そんな奪う立場にいる俺が育てるなんて滑稽すぎる。

故に、なのかはわからないが
これから継続的にこの子犬を飼い続ける気など――――俺にはない。

 

―――と、

 

 

「何してやがる、お前ら。とっとと持ち場につきやがれ」

 

 

南師が来た。
来て早々に卯月の抱く犬を見て不思議そうな顔をしている。

 

 

「……何だ、コレは」

「可愛いワンチャンですよ♪狩谷がつれてきたんです」

 

 

そう言って卯月から子犬を取って南師の目の前まで寄せた。
いきなり目の前に寄せられてちょっと驚いたみたい。

でも、あれ?
何かいつもと様子が違うぞ?

 

 

「良かったら抱いてミマス?」

「……………ゼタうぜぇ」

 

 

何故か異様に溜めが長かったような気がする。
もしかして

 

 

「抱きたいんデショ?」

「〜〜〜〜〜〜いいから早く持ち場に戻りやがれっ!!!」

 

 

逆ギレされた。
幹部サマの命令じゃあ逆らう訳にもいかず。
とりあえず持っていた犬を南師に渡してその場から離れる。

 

 

「おいっ、これっ!!」

「俺ら下っ端は仕事が多いんで預かっといて下サーイ」

 

 

いくらあの南師でも犬をとって食おうとはしないだろう。
うん。
……いくら奇才でも食わないだろう。
オブジェの一部にもしないだろう。
……。

ちょっとだけ不安になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヨカッタ。食われてナカッタ」

 

まさかの可能性を疑い、仕事を卯月にまかせて戻ったのが、南師に犬を預けてわずか3分後。
卯月にも俺の心配事を言ったらかなり信じ込んでしまい、見に行くことを許してくれた。

で、当の南師はというと―――

 

俺が渡したときと同じ持ち方のまま、オブジェの上に座っていた。
どうしたらいいんだろうって顔してる、かなり。
物陰から見ているために細かい表情は見えないけど、雰囲気で悟った。
当の犬は、南師に怯えるかと思いきやそうでもなく、可愛く尻尾を振っていた。
恐る恐る南師は手を犬の頭に置いて、優しく(でも不器用に)撫でると犬が嬉しそうにしている。

とりあえずは、一安心かな

いくらなんでも非人道的なことを考えすぎていた俺に反省。
そう思って立ち去ろうとした俺の視界の隅で

 

見てしまった

 

 

あの南師の照れがはいった笑顔を――――。

 

 

 

 

ああ、やっぱり触りたかったんダネェ、とか
犬好きなんダァ〜、とか
そんなゆるい考えを通り越して

 

 

犬に嫉妬した

 

 

俺の前でさえあんな笑顔みせないのにっ!!!
やっぱり動物と俺とは違うのかっ!!!??
俺も可愛い仕草みせたら笑ってくれるのかっ!?

 

 

 

その考えが俺を支配し始めると、最初は帰ろうかと思っていたのに今は離れられなくなった。

 

 

 

俺がこんな悶々としている一方で―――

 

南師は犬を抱きなおして顔に近づけた。
すりすりと南師の頬に擦り寄る犬。
そして…

 

「うわっ!! いきなり舐めんじゃねぇ!!」

 

 

よっぽと南師に懐いたのか、頬をペロリと舐めてきた。
いきなりの行動に最初はびっくりしていたみたいだけど、次第にその顔が嬉しさに変わっていくのを見ていると――――

 

 

ゴツッ
ゴツッ  ゴツッ  ゴツッ

 

 

まるで何かの呪いのようにブツブツといいながら壁に頭を何度もぶつける俺の姿は
叩きつけてる俺自身でも思う
一歩間違えたら変質者じゃないか…? って。

 

 

 

目を覚ませ、俺っ!!
何フィルターかけてんだっ!! 俺っ!!
人として、犬に嫉妬するなんてヤバイぞっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何してんだ、てめぇ」

 

 

壁に頭をぶつける音にかき消され、南師に声をかけられたことに気付いたのは、さらに壁に頭を2・3回ぶつけた後だった。
俺の行動に興味を通り越して心配しているようだ。
身体的にではなく、精神的な面で。

 

「ハっ!? なっ…ナンデモナイデスっ!!」 

「……額、赤くなってんぞ」

 

頭を強く叩きすぎたらしい。
確かに血が出る1歩前くらいに赤くなっていた。
まぁ、傷自体はそう大したものではなくほっといても大丈夫そうだ。

 

「……ホントに大丈夫か?」

 

下から覗き込むようにして俺の額を見る南師
上目遣いで見てくる南師にドキっとした次の瞬間目に入ったもの―――

南師の服のなかに犬が入ってる
ひょこっと顔だけ出して、あとは服のなかにすっぽりと入っていた。

 

 

 

服の中に入ってる=南師の素肌に触れている

 

 

 

あ、何かが俺のなかでキレた。

 

 

 

「…チョットこれいいデスカ?」

「えっ?」

 

南師の返事も待たずに、コートの中に手を突っ込み、犬を取り出した。
そっと近くに置いてからもう一度南師へ振り返り、強く抱きしめた。
いきなりの行動に、南師も反応できずに俺の腕のなかに収まっている。

 

「うわっ!! 何すんだっ!!」

 

いきなり俺が抱きついたから、腕のなかでかなりの抵抗をみせる南師。
そりゃあそうだろうなぁ、とか思ったが今はそれどころじゃない。

 

 

「俺の頭もナデナデして欲しいデス」

「はぁ!? 何言ってやがる」

「ダッテ……南師サンのせいで額こうなっちゃったんデスヨ?」

「関係ねぇだろ、それ」

 

自分でも何言ってんだろうとか思ったけど、もう止まらない。
今まで表に出さなかった感情が止まらない
まさかこんな事でなるなんて思わなかったけど
この際、このノリで突っ切る。

少し離れて(でも南師は抱いたまま)目を瞑って待ってみる。
でもきっと「ふざけんじゃねぇ、ヘクトパスカルが」とか言って殴られること可能性も考える。
どっちでも良いけど――できるなら撫でて欲しいけど――早くして欲しい。
目を瞑っているから段々不安になってきた。

 

 

 

 

 

 

「…ふん」

 

額に感じる温かみ
目を開けると、俺に手を伸ばし撫でている南師の顔が見えた
呆れ半分、でも、もう半分はまんざらでもなさそうな顔

 

「ホントにこんなんでいいのかよ……」

「“痛いの痛いの飛んでいけー”って言ってくれたらもっと効くと思「調子に乗るんじゃねぇ」

 

睨まれはしたけど、その手はまだ俺の額を撫でる。
俺は黙って南師の手を感じた。
仄かに感じる
暖かさ
優しさ
本当に額から痛みが引いていくような……否、本当に痛みが治っていく感覚。
そして、湧き上がる愛しさが俺のナカミを支配する

 

 

ぺろっ

「っ!!?」

 

身体が勝手に動いた。
動物でいう愛情表現、つまりは相手の顔を舐める行為。
南師への愛しさが、その行動に走らせた。
驚いた南師は俺から離れようとしたが、撫でてる間にちゃっかり腕を腰に回してたから逃げられない。

 

「撫でてくれたお礼ダヨ♪」

 

もう言いながらもう一度南師へ愛情表現。
一回、二回、それ以上。
顔から首筋へ移動し、首筋に赤い痕が残るように吸い付いた。
痕がキレイに残ったなぁ……とか考えてたら、南師が俺の胸倉を掴んだ。
さっきまで撫でてくれた手は、いつの間にか殴る体制になっている

あ、これは怒らせた。
さすがにやり過ぎたと感じたときにはすでに時遅し―――

 

 

「この………ヘクトパスカルがぁぁぁぁ!!!!!」

 

顔が赤いのは照れなのか、それとも怒りなのか
どちらかわかる暇もなく、さっきまで優しく感じた手による鉄拳のせいで地面に叩きつられた。

 

 

 

 

結局は殴られる結末になったな、俺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――で、結局この犬どうすんだよ」

「……ネク君たちに任せるカ」

 

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あとがき

犬に嫉妬する狩谷でした。

狩谷が犬に懐かれる理由は彼が「狗」だからです。
狩谷の後ろを何匹もの犬が後付いてきたら笑えるなぁ……とか思ったり。

 

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