君の笑顔が見れるなら

ちょっとがんばってみようかな

 

 

 

-死神の笑顔-

 

 

 

「なーにしてるのカナ?」

 

オブジェの上で静かにしている南師の後ろに降り立つ。
いつもなら俺が来ると同時に「ヘクトパスカル」とか「ゼタ」とか騒ぐのにね。

一向に振り向いてくれない冷たい南師の後ろから覗き込んでみる。

 

「……本?」

「……あっ、いたのか?ヘクトパスカル」

 

ようやく後ろを振り向いてくれた南師だが、なんかそっけない感じで少し切ない。

 

「何読んでるノ? やけに真剣に読んでたみたいダケド」

「ん」

 

そういって南師が本を開いて俺に渡してきた。
受け取って本を良く見てみると―――――

 

「……これ、数学の本……?」

 

矢印や記号といった未知の言葉の羅列達。
日本語的なところが一切ない。
南師の言動よりもさっぱりな世界。

ついつい、頭の中が真っ白になってしまう。

 

「さっきそこで拾った。数C」

「へっ……へぇ、そうナンダ……(汗)」

 

そう言ってまた本へ視線を戻してしまう。
ううっ……いつもなら平気でやってるスキンシップが何故か数学の壁のせいで近づけない……(汗)
南師も本に熱中してしまい、一人置いてかれた感。
せっかく仕事がひと段落して真っ先に会いに来たのに、寂しい。

何とかして南師の注意を本から俺に移す方法を考えた。

 

 

 

「なぁ、猩」

「あ? 何だ。読んでるからさっさと言え」

 

南師はまだ俺を見ていない。

 

 

 

 

 

「俺にもサ、数学教えてくれないカナ?」

 

 

 

 

 

「はぁっ!!? いきなり何言い出すんだ、ヘクトパスカルっ!!!」

「え? イーじゃん。猩の興味ある事とかもっと知りたいシ♪ 猩だって嬉しいでショ?」

 

 

南師は数学が好き。
だったら、その話を吹っかければきっと振り向いてくれる。

たったそれだけの考えから言った言葉だったのだが、どうやら南師的にはかなりのインパクトを与えたみたいだ。
驚いた顔も可愛いとか思ってしまうのも、俺が彼に夢中だからかなと、ふと思ってみる。

 

 

「……わかった////」

 

ようやく返してくれた返事とともに、いつもでは考えられない位可愛い笑顔――――っというか微笑だが。

あ、ヤバイ。

メチャクチャ可愛いんですけど。

 

 

君の笑顔が見れるなら

ちょっと、頑張ってみようかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――だから何度も言ってるだろっ!!正方行列Aに対してAX=XA=Eを満たす正方行列XをAの逆行列って定義すんだよっ、ヘクトパスカルっ!!」

「……ごめん、猩。いきなりそれは無理……(汗)」

 

 

 

 

水を得た魚のように生き生きした瞳で未知の言葉を喋る南師。

これは……俺、どうしたらいい?

 

 

 

 

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数学の事になると何か喜びそうだなっと思って書いてみました。
あと、南師は理系で狩谷は文系かなと。
どう考えても狩谷に数学のイメージは個人的にないし(笑)

高3の時の数Cの教科書を引っ張り出してみました。
あ……自分、こんなのやってたんだ。全然わかんねぇ……ww
当時も意味不明だったけどw
南師ということで逆行列の定義っつーものを書いてみたけど、何言ってるのかさっぱりわからん。

 

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