この計算式が
どうしてもわからない
-死神の恋心-
「(あいつ……またサボってやがる)」
オブジェから見える景色はそこそこに遠くの情景を見せる。
「(それにしても―――――)」
狩谷を見ると、どうしてこんなに胸が痛くなるのか
最初に胸が痛くなった時など、南師は覚えていない。
それさえわかれば、きっとこの胸の痛みの原因がわかるはず。
これほど難解な計算式は無い。
「よっ、元気にシテル?」
突然の前からの呼びかけに南師は驚いて顔を上げる。
「……何か用か」
驚いたことを隠すかのように、狩谷から視線を逸らす。
「お前に会いに来たってのはダメ?」
「はっ。何くだらねぇ事言ってやがる、ヘクトパスカルが」
狩谷との会話ひとつひとつが
「ナァ、南師。お前……人を好きになった事ってアル?」
あまりに突然な質問
「なっ……何くだらねぇ事聞いてんだ、てめぇはっ!!虚数にされてぇのかっ!?」
よくやく声が出せたのはいいが、明らかに動揺した声しかでない
「俺はさ、今気になる子がいるんダ♪……で、何時告白しようか悩んでんノ」
ズキン
「へっ。そんなの俺が知るかよ。てめぇの事だろ。勝手に告白でもなんでもしてりゃあいいじゃねぇか」
何でこうもイラつくのか
「へー。した後は?」
「だから俺に聞くなっ!!そいつとよろしくやってろっ!!」
体も狩谷と反対の方向へ向きを逸らす
後ろの狩谷の気配はまだ消えない
「てめぇ……いつまでオブジェにいるつもりだ。とっととどっかに行きやがれっ!!ゼタうぜぇ!!」
振り返りまだいる狩谷を追い返そうとした
だが
突然狩谷に抱きしめられた
予期しない出来事に体は固まってしまったが、頭だけは何とか冷静さを保っていた
「……何してんだ」
俺の心臓の音が早くなるのを感じる
「南師の言うとおり、"よろしくやってる"んダケド?」
「……っ!?どういう意味―――――」
「ナァ、南師はサ。俺の事、キライ?」
その一言が
「嫌いじゃ…………ねぇ」
「なあ……。もう少し、このままでいてイイ?」
狩谷の問に対し、俺は狩谷の背中にだらけていた腕をまわした
そんな声を聞いたら
「ありがとう」
別に「ありがとう」なんて言うことは無いのに
だって
俺は、お前の事が――――――
今この瞬間
計算の解が出た
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あとがき
テーマは「好きって事を自覚する南師」。
書いてて段々恥ずかしくなりました。ぷぎゃあ。
ちなみにこの話の原案を書いたのは去年の9月下旬位。
ツンデレ南師の全盛期(笑)
ネタは浮かんでもまともな文章に直す作業は大変だなぁ。
しかも、授業中で半分眠りながら書いてた奴なんかまず解読から始まるし(汗)
ちなみに原案だと南師が完全に自分が狩谷の事を好きだと最初から自覚しているという設定だったけど、変更してみました。
どっちの方が良かったのかなぁ…・・・。