俺の頭の天使と悪魔が言い争っている。
ああ
この状況、どうすればイイんだろう……。
-死神の寝顔-
遡ること数分前。
「ん〜、気持ちいいネ〜。暖かい処でのお昼寝は最高ダネ」
ポークシティの屋上で、誰もいないことをいいことに大の字になって寝っ転がる。
本当は仕事中なのだが、そこはまぁ、他の死神がどうにかカバーしてくれるだろう。うん。
今はとにかく、いつもアイツのいるこの場所でこうやって寝っ転がるというのも、一つの楽しみであって。
アイツが幹部になってからというもの、忙しいのか鉄仮面にこき使われてるのか、なかなか会えないでいた。
暇な現場死神(とか卯月の前で言ったらキレられた)と幹部サマとではスケジュールが合わないらしい。
最後に会ったのが1ヶ月前でそろそろ人肌が恋しくなってきたヨ……。
本当は南師のぬくもりでも感じられたらどんなにいいか・ね。
「はぁ……。スキンシップってこんなにも大切だったんだナー」
空を流れる雲を眺めつつ、手を伸ばして掴んでみたりして時間を過ごす。
キィィィ
ふと、誰かがこの屋上に来たみたいだ。
立ち入りが禁止されてるこのビルの屋上に来る人物など、簡単に予測できる。
日光の角度で顔は見えないが、南師だ。それしか考えられない。
本当はすぐにでも起きて抱きつきたいところだが、何となく意地悪心が芽生えてしまい、そのまま寝たフリを装った。
南師の事だから腹でも蹴られるかもしれないなぁ……とか思って腹に力をいれて奇襲にも備えろという準備の入れ様。
……?
アレ? リアクション全く無し……?
不思議に思い起き上がろうとすると、急に何かが腕に乗っかってきた。
ナンだろうと思いつつ、薄目で腕の方へと視線を動かしてみると―――――――。
南師が俺の腕を枕にして眠っていた。
普通だったら「どうしてこうなったのか」とか「具合でも悪いんじゃないのか」とか思うのだろうが、
その時の俺はの脳は瞬間的に別の考えが浮かんだ―――――
ヤバッ……寝顔、かわいいっ!!!
あらゆる思考が俺の中で巡る中、とうの南師はすやすやと寝息をたてて眠っている。
こうして南師の顔を間近で観るのは初めてかもしれない。
いつもはじっと見る間もなく南師が目を反らしてしまったり、睨み付けられるかのどっちかだ。
何かと壁を作ってきたり
何かと鋭い目つきで睨んできたり
何かと数学的用語を発してきたり
普段から南師の反応見たさに「可愛い」といっていたけど、本当に可愛い。
起きてる時でも、こうやって寄り添ってくれたらどれだけ嬉しいか。
―――――とか、そんな清い考えをしてたのはほんの数分な訳で。
南師の顔を見ていたら、しだいに体がうずうずし始めてしまった。
幾らなんでも寝てる相手に仕掛けるのは人としてはマズイだろ。
でも、こんなチャンスはもう訪れないかもしれない。
頭の中の天使と悪魔が口論し始める。
「こんなにスヤスヤと寝てんのよっ!!恋人として(?)寝かしてあげるのが優しさでしょ!!」
と卯月の姿をした天使。
「いつも警戒している南師サンが自ら(?)身を任せてるのですよ。ここで行動に出なかったら男が廃りますよ」
と虚西サンの姿をした悪魔。
ああっ!!
幹部に誘われたときでさえこんなに悩まなかったのに……っ!!(←え)
そんな葛藤する俺をよそに、南師はまだ夢の中にいる。
「……っん……」
南師の寝言に、今まで葛藤していた思考を現実に戻した。
とりあえず寝にくいかと思い、帽子とバンダナを外して俺の方へと引き寄せた。
よっぽと深い眠りに入っているのか、動かしても起きる気配はない。
なんて無防備。
「……あんまり可愛いと襲っちゃうゾー」
そう言う俺の理性は結構危なかったりもするんだが……。
「――――…き」
「えっ?」
南師が何か言ってるみたいで口を動かしている。
さらに抱き寄せて俺の顔に近づけて耳を傾ける。
「こ……き」
「っ!! しょ…猩っ!?////」
甘えるような声で俺の名前を囁く。
こんなのを聞いたら、もう大人しくできるわけが無い。
もうダメだ。
俺の中の悪魔が勝った。
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あとがき
南師サイド話
徹夜で計算していて寝ていない
↓
会議に遅刻。そして説教
↓
フラフラで屋上に到着。
↓
枕(狩谷)がある
↓
寝る
という裏な話があったりする。
ちなみに夢の中に狩谷は一切登場せず、しかも狩谷の聞き違いという言わなきゃわかんない設定があったりする。
普段よく喋るヤツほど寝ているときとかの大人しい姿を見るとどう対応していいのかわからない。
そんな感じ。
色々足していったら面倒臭くなってきたのでもっとシンプルにすればよかったと反省。