新しい世界
時間
刻み
過ぎる
(2回目)
new year セカントシーズン
「……来ねぇ」
布団を被り、扉をじっと見ながらつい口から零れた。
去年の1月、狩谷やらコンポーザーやらが部屋に押し入ってきて大変だった。
コンポーザーに拉致られて目が覚めたら外だったし、
狩谷にはいきなり目の前に現れたと思ったら寝込みを襲われるし、
今年は、奴らを返り討ちしてやるっ!!
そうと決まれば、やることは一つだ。
待ち伏せ
向こうが来るのならこっちからあいつらを討つ準備をすればいい
そのタイミングで来るかわからなかったから、仕事をとっとと終わらせて夜7時―――テレビでは紅白が始まった―――から待ち伏せした。
紅白が終わって、
カウントダウンが終わって、
除夜の鐘が終わった。
来ない
全くくる気配がない。
普段なら年越しなど全く気にせずに寝るところを奴らのせいで無理やり起きている。
瞼が重く、睡魔が襲ってきた。
寝るな
寝たら、奴らに寝ている間に何されるかわかんねぇ!!!
するとそこに――――
コンっコンっ
「来たっ!!」
時刻は深夜1時
一通りの祭りがひと段落している時間。
俺の部屋の扉を誰かがノックした。
何だ、今年は一応礼儀は守ってるつもりか、ヘクトパスカルが
ベッドから出て、扉の前に立つ。
もう一度、ノックが鳴る。
……
「今だっ!!今年はてめぇらの思い通りになんかなってたまるかぁ!!!!」
「えっ!? ちょ……うわぁ!!!!」
扉をいきよいよく開けて跳び蹴りで向かった先にいたものは、
狩谷でも
コンポーザーでもなかった…。
「……777?」
痛い
すんごい痛い
なんで俺がこんな目に合わないといけないんだ。
折角年末ライブを成功させて気分が良かったのに、突然狩谷さんに拉致られた。
で、連れて行かれた先でなぜかもう1人とくじ引きをされた。
3本白い紙があり、そのうちの1本が先っぽの方が赤い。
つまりは当たり。
そのくじを俺が引くと、狩谷さんともう1人は残念そうに、しかしすぐに開き直って「ガンバ☆」と言われてまたどこかへ連れてかれた。
連れて行かれた先は、南師の部屋の前。
「君もレギュラーだから、今回は君に譲ってあげるよ」と意味のわからない言葉をもう1人の奴に言われ、二人は去っていった。
マジで狩谷さんと一緒にいた人物は誰なんだ…。
とりあえずは、まずあれだよな。挨拶。
そう思ってノックをした。
もしかしたら寝てるのかもしれないと後から思ったけど、中には一応人の気配があるようだった。
もう一度ノックした。
次にきたのは、南師の跳び蹴りだった――――。
そして、今に至る。
盛大に吹っ飛んだ俺を、さすがにマズイことをしたと思ったのか、南師は俺を部屋にいれ、今は顔に湿布を貰っている。
ベッドに二人で座って、南師から手当てを受けている。
ムードとか、そんなの言ってる場合じゃないっていうのは、多分俺が一番良く分かってる。
一応俺は、ライブから今までのいきさつを南師に話した。
南師は何だが何か言いたそうだったが、何か呑み込んだ。
すみません、俺もよくわかってないんです。この状況。
南師の部屋で二人っきりでいる――――なんて美味しい状況を理解できてないんです。
あ、でも今はちょっと理解できてるかも…。
「あっ…後は自分がやります」
「…そうか」
そう言って南師の手から湿布をとって自分でつけた。
…?
湿布をつけながら、目の前にいる南師の顔を見た。
さっきから何故か体が揺れていた。
何でだろうと、正面からちゃんと見て、わかった。
今にも寝そうになってた。
俺が来たことでこれ以上の襲撃がないことに安堵したのか、きっと緊張の糸が切れて睡魔が襲ってきたのだろう。
かくかくと、頭が俺の方へ倒れてくる。
あー俺の頭にぶつかりそうだなぁ、とか、思った。
「大丈夫ですか?もう寝た方がいいですよ?」
「……ガキ扱いすんじゃねぇ」
そんな事を言っても、もう意識が遠のく寸前だと、誰がみてもわかる。
「……南師さーん」
「…」
「…南師さん?」
「…ん…」
トスっ
南師の頭が俺の肩に倒れこんだ。
後に聞こえるのは、彼の寝息。
肩にかかる体重が、彼の重さ。彼がいるという実感。
「…どーすっかなぁ。動くに動けないし…」
頭に手をおいても、起きる気配はなかった。
このまま寝てたら、体勢がキツイかもしれない。
そう思い、南師の体を支えてそのまま俺の体をベッドの方へ倒した。
つまりは、今俺は南師と添い寝してる感じ
体勢だけ変えたら帰ろうと動いたけど、南師の手が俺の服を掴んで放さなかった。
どうしよう…
まっ、いいか。俺も眠くなってきたし。
でも、折角なら――――
南師の体を抱き寄せ、顔を俺の胸に寄せた。
子ども体温…というにはさすがにそれほど暖かくはなかったが、それでも俺には暖かく感じた。
眠る南師の額に、触れるだけの口付けを交わした。
「オヤスミ、猩」
初夢というには、もう遅いかもしれないが
いい夢が見られますように――――――
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あとがき
去年の元旦に書いたやつの第二段です。
前回が狩谷とコンポーザーだったんで、今回は777です。
どうもうちの南師は777を下に見つつも心を許してる感があるようです。
多分、狩谷のようにいきなり行動に移さない大人だからじゃないだろうか。
でもそのままだとヘタレ突入なので、たまには頑張って下さい、ナナミさん。