<この企画は、普段飼うことのできな動物を飼育することで、その動物の生態を知ることのできる企画です>
色んな動物を飼ってみよう。
「―――――で、何で俺?」
突然の上からの呼び出しに、何事かと思いきやこんな企画。
プライバシーは守られるから大丈夫
多分命の危険は無いから大丈夫
……っておい、“多分”って何だよ、多分って!!
そんな曖昧な説明だけを聞かされて、指定された小屋(という設定の普通の部屋)に着いた。
何故か外側から鍵がかけられていることに猛烈に気になった。
つまりは
鍵=危険動物って事じゃないか?
例えば…今話題(?)の禁断ノイズとか。
そんなの出てきたら下っ端死神なんか即死だっての!!
でも、上からの命令には逆らえない訳で。
覚悟を決め、鍵を外して中に入った。
「失礼しまーす」
誰もいないのはわかってるが、何かしら喋っていないと恐怖にやられる。
恐る恐る玄関を抜けて、居間の前までたどり着く。
中からは“何か”がいるとわからせるような物音。
音から大体の大きさが察せる。
小型ではない。
大型がいる気配の音。
気づかれぬようにそっと扉を開けて中を確かめよう。
静かにそう決めてゆっくりと扉を開いた。
そこにいたのは……
俺の上司(のはず)の南師だった。
ちょっと待て
いつの間に俺の上司は動物になったんだ。
いや、確かに耳とか尾とか生えてるけど(あれ?)
それ以外はいつもと同じ姿カタチ。
いいのか、上層部は。
当の本人は俺に敵意剥き出し。
鋭い目つきで威嚇中。
あれ。もしかして喋れないのか?
数々の疑問が頭をよぎるがどれも消化不良。
とりあえず真ん中にある机の上にある説明書を読むことにした。
この本が、きっとこの展開の手助けになってくれるっ!!!
<南師猩の飼い方>
<南師猩。18歳の男の子。>
<渋谷区に生息する死神の一種レオ・カンタス系です>
<人見知りが激しく、最初は慣れるのに時間がかかります>
<まずは、かっこいい名前をつけてあげましょう>
パタン
俺は飼育方法と書かれた本を閉じた。
どこからツッコめばいいんだ(汗)
というか…
全部だよっ!!
おかしいのっ!!!
救いのはずの本は、余計に今の状況を悪くした。
ぐいぐい
後ろからパーカーを引っ張られ何かと思って振り返ると南師が引っ張っていた。
喋れない奴と、一体どうやってコミュニケーションをとればいいのか…。今後の課題。
「何だ? 何か用か?」
俺の言っていることくらい理解できてるだろう。
俺がそう聞くと南師は台所の方を指差した。
どうやら腹がへったらしい
そっか、動物だから作れないのか
いや、そもそもこの人自体が料理できないのかもしれない
幸いといって良いのか、一人暮らしの俺は普通くらいにはできる。
俺が選ばれた理由ってそれ?
「待ってろ、今作ってやるから」
腹がへったからか、最初に入ってきたときと比べると敵意は無くなった様だ。
台所と南師のいる部屋との間の扉を閉め、備え付けてあったエプロンをつけて冷蔵庫を見た。
そういえばエサの項目見忘れたけど、大丈夫だよなぁ?
もう一度南師のいる部屋に戻って本だけを持って台所へ戻った。
本には“人間”と同じ食べ物で大丈夫と書いてあったけど、これはツッこむべき?
「ほら、とりあえず簡単なの作ったけど、自分で食べれるか?」
そう言いながら俺が持ってきたのはオムライス。
ほら、何となく突然食べたくなるやつってあるじゃん?
台所に立った瞬間、俺の頭の中に浮かんだのがコレで、作り終わってから南師のことを思い出して後悔。
もしこれがいつもの南師なら「そんなガキの食い物なんか食えるか、ヘクトパスカルっ!!」とか叫びそう。
…いや、意外にイケるかも…?
そんなこと考えてたら、南師は俺から皿を奪って食べ始めた。
よっぽど腹が空いてたのか?文句一つ言わないけど(てか言えない?)
「美味い?」
聞いてるかわからなかったけど、自己満足で聞いてみた。
南師は――――小さく頷いた。
うわっ、何か無茶苦茶嬉しい。
こういう気持ちって何だろう。
まるで新婚さんってか?
冗談はこの状況だけにしてくれ(汗)
食事が終わると、今までの態度が嘘のように懐いた。
これって餌付けっていうのか?
一緒に数学の本とか読んだり
(意味はわからなかったけど)
髪とか梳かしてあげたり
(耳を触ったらふにふにしてた)
風呂にもいれてやったり
(ちょっと俺の理性がやばかったけど)
時間が経つのは早い
夜になり南師を寝かしつけてから俺も寝ようとしたら、
寝かしつけたはずの南師が一緒のベッドに入ってきた。
しょうがないなぁ……とか思いながらも、追い返す気は全く無く、
頭を撫でてやると、俺の横で深い眠りについた。
あーあ
このまま、 ずっと、 このままでいてくれたらいいのに
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あとがき
「まるで新婚」をテーマに果てしない暴走を経てやっちゃいました。
でも777兄さんは常識人なので襲いません。大人です。
某動物番組でホワイトライオンを飼うというのを見て書きました。
動物って、見てて本当に癒されますよね…。