今日は何て良い日だろう

 

 

 

 

 

 

 

good day

 

 

 

 

 

 

今日も絶好調
チケットも全部売れて観客満員
喉もギターも声も舞台も曲も全て
何て今日は最高の日

ステージが終わり、ファンの子達から花束をもらった
その中の一人が一生懸命に手を伸ばしてきたから、握手をしてあげると
その子はとても喜んで
そんな喜んでいる顔を見たら、俺もなんだか嬉しくなった

 

 

 

 

「おい、777。幹部がお前を探してたぞ」

「はっ!?」

 

ステージを終え、片付けをしていた俺の元にテンホーが伝令を持ってきた。
俺達デスマーチの中でこういうスケジュール管理がしっかりしているテンホーに、よく伝令が渡される。

 

「何で俺なんだよ。てか幹部ってもしかして……」

「あの“奇才”南師だ。お前、何かしたのか?」

 

南師。
実は俺達は付き合ってたりする。
(あれは付き合ってるというのかちょっと疑問だけど)
他には内緒で。もち、メンバーにもナイショ。
幹部の立場を大いに利用して、南師はよく俺を呼び出す。
あるときはオブジェの材料集めに呼び出されたり
あるときはむしゃくしゃしてるからと問答無用に殴られたり
あれ、
俺、不憫じゃねぇ?

 

「……いや、ナニモシテナイヨ」

「何だよ、その棒読み加減は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……何だろう……用って」

 

折角今日は最高の日だったのに、一体何をされるんだろう
そりゃあ、南師と会えるのは嬉しい。
しかも当の本人からの直々のお誘いとあらばちょっとは期待できるもの

でも、何というか…
理想と現実を突きつけられて、最近はあまりロマンチックな妄想はしていない
そんなことしても、「ああ、やっぱり違う」って独りでヘコむだけだから…

 

「南師サーン。来ましたけど……」

 

相変わらずオブジェという名のゴミ山の上で座っていた俺の恋人
(せめてそう呼びたい(泣))
元々目つきが悪いと思っているのに、今日はさらに悪い。
つまりは、機嫌が悪いという事。それもすこぶる。
俺、何もしていないよなぁ?

 

「ゼタ遅ぇんだよっ!!呼ばれたらすぐに来やがれ、ヘクトパスカルがっ!!」

「えええええっ!! まだ予定時刻より10分も早いんですけどっ!?」

「俺より先に来ていない時点ですでにアウトだっ!!」

 

でた、理不尽な都合
元々この人のいう事はハチャメチャだと思っていたからそう驚きはしないけど。
かといって、慣れてる訳ではない。
大体、そっちからの呼び出しなのだから、そっちより早く着ける訳がないって事、わかってんのか?

そんな事を考えていたら、南師が登ってこいっと言わんばかりに俺を睨み付けた。
恐る恐る足場の悪い山を登り、南師の前に立った。

 

「あの……何か用……ですか?」

 

 

 

 

 

「……あの女誰だ」

「……へ?」

 

予想もしなかった話題。
あの女って…一体どれのことをいってるんだ?
今日、そんな女の子と出会う機会など、ついさっき終わったライヴでしか――――
もしかして…

 

「ライヴに、来てくれたのか?」

「お前と握手したあの女、誰だ」

「えっ? ああ、ファンの子だけど?」

「それだけか」

「そうですよ。それ以外何があるんですか」

「……そうか」

 

何だ、この空気
何だ、この質問
南師がライヴに来てくれたっていうのにもアレだけど、
これは……

 

「もしかして」

 

もしかすると……

 

「嫉妬してる?」

「っ!!」

 

びくっ  と、反応する南師
しかもそれ以降黙りこくってしまった。
えっ、ちょっ、嘘……。
ふざけて言ったつもりなのに、もしかして図星なのか…?

 

うわ、どうしよう……
めちゃくちゃ嬉しい

 

 

「南師」

 

そう言いながらうつむいてしまっている南師を正面から抱きしめた
無理やりこっちを向かせて額にキスを落とす。
赤面する南師を横目で見ながら、耳元でぼそっと一言

 

 

 

「南師は、俺の――――イチバンだから」

 

 

自分でもちょっと恥ずかしいこと言っちまった
でもそれが、南師にとってはかなり効いたみたいで―――

 

「……今日、俺の部屋に来い」

「えっ!? だって…いつも嫌がるのに―――」

「来るのか消されたいのかどちらか選べ」

「喜んで行かせてもらいます」

 

 

 

これ以上ないくらいの上機嫌。
しかも今日はお許しまで貰った!!
ったく
年下の恋人は
可愛い過ぎるんだよ。

 

 

ああ

 

 

 

今日は何て最高の日!!

 

 

 

 

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あとがき

南師、理不尽ツンデレ炸裂。
別の777を書いているときに同時に思いついたやつです。
こっちは完全に南師と777がラブいです。

いつもは「こいつ本当に俺の事好きなのか?」と疑いたくなるような態度だけど、
実は誰よりも独占欲が強いからそうだったら何て傍迷惑(汗)

よかったな、777。
ちゃんと愛されてるみたいだよ(笑)

 

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