それが例え一時でも
それが例え衝動的でも
それが例え気分でも
俺は忘れない
get tired of
苦悩のバレンタインから数日が経った。
特にミッションも出されている訳でもなく、バンドで集まる事も無く、ただぶらぶらしているでもなく。
今俺は何故か上司の部屋の前にいる。
しかもその上司っていうのが南師で
おまけに何故か片手に小さな紙の袋を持って立ってる。
……えっと、何でこうなったんだ……?
はっきり言って、今の自分の行動は俺自身にも理解不能。
そうだ、あの日からだ。
あのバレンタインの日。
あの日、あの時の出来事がずっと頭の中でリピートしてる。
そのせいで作曲にも手がつかねぇ
ああ、そうだ。
いつも見慣れた姿じゃない上司の姿を見たからこんなに動揺してるんだ。
だからいつもの姿、例えばオブジェを作ってる姿とか…
そんな日常を見たら今の俺の症状が治るかもしれない。
そう思ってここまで来たんだ。
手ぶらで行くのもなんかおっかなかったから手土産という名のチョコを持って。
あの南師の部屋。
きっとよくわからん造形物なんかで物が溢れかえってるんだろうなぁ……。
まぁ、そういうのが見れれば余計に安心っつーか、何というか……。
仮にも自分の上司である部屋に入るのだ。
扉のノブに手を乗せて一回深呼吸。
コンコンッ
「失礼します」
ガチャ
部屋の扉を開いた。
「……すいませーん。南師サーン?」
開けたはいいが、部屋の主らしき存在は感じられなかった。
「もしかして……留守?」
あの人が部屋にいない理由なんて会議にいってるかオブジェ作ってるかしか浮かばない。
という事は、この部屋に帰ってくるのかなり後になる。
――――と、勝手に定義つけたけど。
本当ならいけない事だけど、南師の部屋に少し興味があったので、そのまま奥に入ってみた。
何も無いに等しい位の殺風景な部屋。
ベッドや机等の必要最低限のものがあるだけで、後には何もない。
(机の上に大量に積まれた書類は見なかったことにする)
てっきり変な造形物で埋め尽くしてると思っていたのに…
「何か……拍子抜けしちまったなぁ……」
何か、少しショック。
だって、部屋をこんなに綺麗にしてるんだったら仕事中に変なもの作って散らかすなって事。
自分の部屋でやれ、部屋で。
他のものを巻き込むな。
そして、俺らに後片付けをさせるな。
あー。何か無性に泣きたくなって来た。
いっその事、日ごろの恨みを晴らす為に部屋を散らかしてやろうか……?
……いや、さすがに非道徳的な事には手だせねぇな。
「……何してる」
部屋の主が帰ってきてしまった。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
例の症状の事もあるけど今の状況がヤバ過ぎる。
しかも、何か不機嫌そうだし。
良くてフルボッコ、悪くて消滅。
……どっちもほとんど同じじゃん(泣)
「あっ……いやっ…何というか…用があったので訪ねたんだけど…」
「……それで誰もいない部屋ん中入るのか、てめぇは」
「うっ……。いや、それは悪かった……です」
好奇心で入りました、何て正直に答えられるはずがない。
ああ、こんなことなら来るんじゃなかった。
今更ながら後悔。
「じゃあ帰ります。あっ、これ土産です。」
「……待て」
死亡フラグがたった。
「……何ですか」
「こっち来い」
さよなら、テンホー。
さらなら、BJ。
先にあの世にいってお前らの活躍を祈ってるよ。
ベッドに座る南師の前まできて、何がきてもいいように一応気持ち的には構える。
「あの……何か用――――――うおっ!?」
何がきてもいいように構えてたのに、南師が俺の腕をつかんでベッドに倒したのには反応できなかった。
どすっ
ベッドに倒され、頭の中で浮かぶのは嫌な予想ばっかり。
だから―――――南師からのキスに思考が追いつかなかった。
いつの間にか南師に押し倒されてる姿勢になってて、俺の上に南師が乗っかってキスをしている。
これだけのことを認識するのに、かなりの時間がかかった。
というか、俺が我に返って南師を突き放すまでこいつはずっと俺から離れなかった。
「はぁ……はぁ……何なんだよ、いきなりっ!!」
「甘いのはもういい」
「はぁっ!?」
そういってまた南師は俺の上に覆いかぶさった。
俺の手をとり、指を口の中にいれて舐め始めた。
バレンタインの時にも感じたが、こいつの舌使いはエロい。
って、何冷静に考えてるんだ、俺は。
いや、冷静になったからこそだ。
南師の舌に
瞳に
動きに。
目が離せない俺がいる。
「今は」
もう一度、南師からの口付け。
今度は深く、舌を絡ませて。
「お前を寄こせ」
甘いものの次は俺って事?
「……それって、いつまで?」
「俺が飽きるまで」
そう言いながら口から首へ舌を移動させる南師。
その行為に耐えられなくなった俺は、南師をつかんで押し倒した。
最初は押し倒したことに抵抗してくるかと思ったら、全く抵抗してこない。
「こうなる事、わかってやったのか?」
「あたり前だろ。誘ってやったんだ」
「じゃあ、この後も?」
「いいからとっととヤリやがれ」
あっ、そう。
本人からそう言うんだったら、流されてやろうじゃねぇか。
生意気な口を俺の口で塞ぎ、片手でコートのボタンを外し始める。
今更待てと言われても、もう止める気はない。
「俺、こいつに惚れたんだな……」
横で眠る南師を眺めて一言呟く。
普段うるさい奴も、眠ってしまえば年相応。
頭を撫でても起きる気配はない。
あのバレンタインの事が忘れられなかったのは、あの時に惚れちまったからだったんだ。
でも、南師にとってはただの暇つぶし。
俺に“今だけ”興味があるから一緒にいてくれるだけ。
だから、興味が無くなれば
こいつはすぐに離れていく。
ただ一言「飽きた」と残して。
でも
それが例え一時でも
それが例え衝動的でも
それが例え気分でも
俺は忘れない
いつかまた
俺のところへ来てくれるまで
今のこの短い出来事を
忘れない。
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あとがき
グミさんより相互記念で「ナナミナでバレンタイン後」です。
こんなんで、よろしかったでしょうか……?
というか、途中ミナナナ(笑)になってるぞ……?
「get tired of」は熟語で「飽きる」という意味です。
私愛用のYahoo辞書で検索してみましょうwww
一言解説。
「ボクに釣られてみる?」(電●ネタっ!?)
やっぱり途中からグダグダになった感がします…(汗)
本編に細かい設定ないからどうも言えないけど、777兄さんは女性経験が豊富そう。
で、南師は南師自身からは言い寄ってこないと思う。
なんか形だけで付き合っても絶対ついていけなくて自然消滅になりそうだよね。
後、出てきてないけど狩谷は絶対経験豊富だと思うっ!!!
そりゃあ……あっちからこっちまで色々……ねぇ?(あれ、この話ナナミナ……)