欲しい
欲しい
甘味欠乏症
「はぁ……まだこんなにあるよ」
ステージの裏、一般の立ち入りが禁止されているそこで、俺はため息をつく。
ため息の理由というのが……大量のチョコレート。
そう。
今日はバレンタインデー。
バレンタインデーライブという事で、俺ら宛てに大量のチョコレートがきたって訳で。
チョコレート自体くれるのは嬉しい。
問題はその後だ。
「俺……甘いモン苦手なんだよなぁ」
しかもチョコレートの量はBJやテンホーよりも多い。
二人は俺が甘いモノを苦手としてるのを知ってるから「ご愁傷様」と一言。
甘いモノが苦手だとファンの子たちにいうのが手っ取り早いけど、折角のバレンタインデーにそれは可哀想だと思って黙っている。
「はぁ……。とりあえず手作りのやつは早めに食べとかないとなぁ」
ファンが俺たちの為に作ってくれたんだ。
そう思いながら食べれば、一応何とかなった。
「んな所で何してやがる」
口にチョコレートを入れた所で、正面の声の主、南師を見る。
手は次のチョコレートの箱を開け続ける。
「何って……チョコ食ってんだけど?それが何か?てか、どうやってここに入ってきた?」
「嫌そうに食ってんな」
「無視かよ。……心外だな。ファンからのプレゼント、ありがたく頂いてんの」
嫌そうな顔に見えたのか。
今度から気をつけよう。
とか考えてたら、突然南師がまだ手をつけていない箱を奪った。
何すんだとか思ってたらフタを開けて中味を食いやがった。
「ちょ…何すんだよ、あんたっ!!俺のを勝手にっ!!」
それでも手を止めずに食べ続ける南師に、俺は立ち上がって腕をつかんで止めた。
「何考えてんだ、あんた!?いきなり来たと思ったら突然っ!!」
「……足りない」
「はっ?」
足りないって、何が?
こいつの言ってること、いつもわからないけど、今はもっとわからん。
「お前、何言ってんだ?」
「足りないんだ」
「だから何がって―――――んぐっ!!」
唐突に塞がれる唇。
南師からの口付け。
一生懸命に舌を絡ませようとしている。
「んっ……」
必死に縋ってくるこいつに、普段の姿とは到底結びつかない。
最初は戸惑っていた俺も、南師からのアプローチ(?)にしっかりと流された。
南師の腰に腕をまわし、腕をつかんでいた手は南師の頭の後ろへとまわされる。
くしゃ
髪をつかみさらに深く口付ける。
いやらしい水音が、ステージ裏に響く。
もしかしたら人来るかもな、とかふと思ったけど止めなかった。
「―――――で?突然来てチョコ食いまくって俺にこんな事して、一体何がしたかったの?」
濃厚な時間の後、俺は南師から少し距離をとって事の次第を聞いた。
何で離れてるかって?
いや……
アレ以上やってたら俺の理性がもたないって。
場所が場所じゃなかったら流されても良かったけど……。
「……甘いモンが欲しかった」
「……そんだけっ!?」
「ああ」
やっぱりこいつがわからない。
そんだけの理由で俺とあんな事したのかっ!?
「チョコの件はわかったとしても、何で突然……」
「お前の口ん中、甘そうだったから」
おいおい、何だ。
誘ってんのかお前は。
てか、絶対そうだろ。
「……まだ足んねぇ。じゃあな」
「ええっ!!ちょっ……待てって!!」
ふらふらっと南師はどこかへ行ってしまった。
一体何だったんだ。
でも
甘いのは苦手なはずなのに……
むちゃくちゃ甘いモン、貰っちまったよ。
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あとがき
スケジュール崩壊の為にギリギリ掲載となったバレンタインもの。
777南です!!
簡単説明するなら「甘いものを求めてさ迷う南師」……?
状況説明。
これ思いついた時、空兄自身がとにかく甘いものが食べたかったという事。
で、何で南師が777兄さんの所にいったかというと、バレンタインのおこぼれが貰えるかな☆みたいな考えが浮かんだから。
それで、その前からチョコ食べてた777兄さんを見て「こいつの口ん中も甘いかもしれない」とか思ってやっちゃった☆
という感じです。
まるで中毒者のような南師さん(爆)
当然ながら甘いもの苦手っていう777兄さんの設定は捏造です。