オリキャラ出現設定です。

 

 

 

 

鏡〜すべてをうつしだすもの

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アイ、ユウ、リサ、チョビのいつもの面子は、地下鉄<エリザベート>に乗っていた。
いつものようにチョビに銜えられているアイ。
その様子を見ているユウとリサ。
しかし、今日はいつもと違う。

少し離れたところに、“風”がいた。
前の町で彼を発見し、アイが無理やり連れてきたのだ。
無論、只で来るような男ではないので、ポシェポケの中から首輪を取り出し、“風”の首に付け―――

現在に至る。

プシュ……
地下鉄が停止した。
アイはチョビから解放される。

「あぅ〜。目が回る〜」
「お姉ちゃん、早くっ!」

いつにも増して、張り切るユウ。
そんな感じで今日も、アイとユウの両親を探しに、異界へ。

はたして、今度はどんなところなのだろうか。
父と母は、見つかるのか。
地下鉄<エリザベート>の扉が開いた。

 

 

 

リサ達一行は、建物全てが鏡でできた町に辿り着いた。
中央の広場には大きな井戸のようなものがある。

「うわぁ、綺麗だね」
「すごーい♪」

はしゃぐアイとユウ。
その後方でリサは二人を暖かいまなざしで見守っている。
風は何を考えているのか、ぼーっとつっ立っていた。
ユウがあたりを見渡す。
ちらっ
遠くのほうで何かが見えた。

「……あれ、ねぇお姉ちゃん」
「何?」
「今、あっちの方で何かいたよ。人…みたいだったけど」
「もしかして、お父さんとお母さんかもっ!」

ユウとアイはチョビを連れてユウの指した方へと走っていく。

「待って、アイっ、ユウっ!」

リサも後を追いかけた。
“風”の存在を忘れて。

 

 

 

「あ、あれ?お姉ちゃん?チョビ?」

走っているうちにはぐれてしまったのか。
ユウは後ろを振り返る。
ミラーハウスのような町なので、今自分がどこにいるかも分からない。

「どうしよう…」

辺りを見渡すユウ。
ちらっ

「また何か見え……」

ユウは絶句した。
自分が見たもの、それは―――――

「お父さん、お母さんっ」

ユウは駆け出した。

 

 

 

「お父さん、お母さん…」

ユウが見たもの。
それは鏡に映った自分の父と母だった。
その鏡に近づくユウ。

「やっと、やっと会えた…」

ユウは涙を流した。
両親はニコッと笑う。
しかし―――

『   』

母は急にユウを見る目が冷たくなる。

「え……?」

ユウは母の顔を見る。
今、何て……?

『   』

父も母と同じまなざしでユウを見る。
ユウは愕然とする。

「そんな…お父さん…お母さん…」
『誰も守ることなど出来ないくせに』
『しょせんは、何も出来ないただのガキなのさ』

ユウはその場で崩れ落ちた。

 

「うそ……お父さん、お母さん…」

同時刻、アイも同じ両親を、ユウとは別の場所で鏡を見て、立ちすくんでいた。

 

 

 

リサは走っていた。
アイとユウを探すが、見つからない。

「…?」

走りをとめるリサ。

「…(何か、不吉な氣を感じる…)」

辺りの様子を見た。
一体、どこから――――

<……ここだよ>
「っ!?」

リサの心の中に直接響いてくる声。

「誰、誰なの?」
<……助けて…>
「誰なの、出てきて!」

リサが叫んだ。

 

 

 

<そこ、の角……左に…>

声が途切れた。
リサは言われた通りに行ってみる。
走って左に曲がり、まもなく少し広い広場に出た。

「どこにいるのかしら」

あの声の主は。
リサは辺りを見渡す。
人の気配はする。
だが、どこら辺りにいるのか…。
こっ
音がした。
何か、こすれるような音。
こっ
まただ。
こっ
まさか、あの声の主?
音を頼りにリサは走る。
…こっ   …こっ   こっ   こっ   ごっ   ごっ
どんどん音が大きくなる。

「あっ…」

そして、リサは自分を呼んだ、あの声の主を見つけた。

 

 

 

<よかった。僕の声、届いてたんだ>

声の主は、安堵して言う。
リサは驚愕した。

「あ、あなたは……」

声の主―――十代半ばの少年―――は微笑んだ。

<はじめまして。僕はキョウ。この町の番人さ>
「どうして鏡の中に……っ!?」

少年―――キョウはためらいながらも言う。

<…封印されたんだよ。ガウディウムに>
「ガウディウムっ!!」

それは、破壊を司る戦慄者、タイラントの組織。
異界の様々な国、町を破壊し、恐怖と、絶望を呼ぶ。
やはり、この町にまで―――

<…あの>
「え、あ、はい」

リサは我にかえる。

<お願いがあります。そこの…ほら、赤い石がはめ込まれているやつを壊してくれませんか>

指を指すキョウ。
リサは指を指す方向へと目を向ける。
丁度足元に、十センチくらいの赤い石がはめられていた。

<そう、それです>
「これは…?」

この石から邪悪な氣を感じる。

<あっ、それは、僕の封印を解く石です。その石のせいで、ここから動けないんだ>

 

 

 

「じゃあ、私を呼んだのは、この封印を解いてもらうため?」

リサが問うと、キョウは首を横に振る。

<それもあるけど、まだ他にも――――>

言葉をとめるキョウ。

「どうしたの?」
<大変なんだ。君の連れの子供が、この町の罠にかかっている>
「…罠?それじゃあ、アイとユウは!?」
<大丈夫だよ……今は、ね>

少し安堵するリサ。

<今は、だよ?……早く行かないと、子供達が危険だよ>
「アイとユウは、どこにいるのか、わかる?」

焦るリサ。

<ここは普通じゃ分からないみ「教えてっ!!」

リサが叫んだ。
一瞬たじろぐキョウ。

<…あなたじゃ無理だ。けど僕が、ここから動くことが出来れば案内できる。だから、この封印を解いてくれないか?>

キョウはにっと笑った。

 

 

 

「はあぁぁぁぁ……」

氣が、自然の氣が、全ての源の氣がリサの周りに集まる。
そして、その集められた氣を―――

「はぁっっ!!」

放出!!
…ぱきいいぃぃんっっ!!
赤い石は、氣の力によって、粉々になる。
完全に破壊された。

<うわぁぁっ!!>

キョウの身体に異変が起きた。
キョウの周りに電気のようなものが走る。
そして、少し経つと、体中から電気が抜けたのか、動きが収まった。

<……>

まだ外に出れるわけではないようだ。
鏡の中でしか身動きがとれないみたいだ。

<(二重封印か。多分、僕が外に出るためには、あいつを倒さないと……それにしても…)>
「…ふぅ。これで、案内してもらえるわよね?」

リサが言った。

<ああ、約束は守るよ。外にはまだ出れないけど、鏡の中でなら移動して案内できる。こっちだ!!>

キョウは鏡の中で走った。
リサもキョウの後を追う。

<(なんともまぁ……凄い人が来たものだ。氣現術の使い手。しかし、使いかたによっては命を落とすことになる危険な術。何故こんな娘が…)>

 

 

 

しばらく走ると、アイの姿が見えた。

「アイっ!!」

アイはリサの声が届いていないのか、反応がない。
アイに駆け寄るリサ。

「アイ、アイっ!!」

アイの肩を揺らすリサ。
ふとリサはアイの見ている鏡を見て、驚いた。

「ハヤカワ…夫妻!?」
「惑わされては駄目だ!! そいつは幻だ!!」

キョウの声にリサは我に返る。

「…はぁっ!!」

氣を開放。
ぱきいぃぃん。
鏡は見事に粉々に砕け散る。
それと同時に、アイが越えをあげた。

「あ…リサ」
「…よかった。無事で」
「今のは?」
「君が見たのは、君にとって最も絶望的な未来の様子だ」

アイは聞きなれない声の発生源―――鏡の中にいるキョウを見る。

「ほえ? ……ええ―っ!!!何で人が、鏡の中に〜っ!!?」
「その話は後で。確か君の連れに……チョコボがいたよね」
「あ、うん」
「もしかしてあの子?」

キョウがある一点に指を指す。
ひょこ
角から出てきたのは、首に異界時計“イザベル”がついたチョコボ―――チョビだった。

 

 

 

「ユウは、どこ?」

アイとリサはシエルに乗り、道沿いに従ってゆっくり飛んだ。
キョウは建物の鏡をたどって二人の後を追う。

「ねぇ、あんた。ユウはどこにいるのよ〜」
「“あんた”じゃなくって、僕はキョウ。今、僕の力で探してるんだけど……くそっ、うまくいかない」

キョウは愚痴を吐く。
アイが口を開く。

「でも…何であんなの見せられたのかな?“絶望の未来”ってやつ」
「それが、この町の力さ」

キョウがアイの問いに答えた。

「この街の力は、鏡を見た者の、自分の望む姿を見せるんだ。簡単に言えば“未来”。未来を映し出す能力があって、それが秩序を崩すんだって」
「秩序…」
「その力を管理する僕を封印して、逆にその力を利用して、混沌を育てているんだ」
「そうだったの…」

リサは呟いた。

「この街の力の罠に嵌ると、絶望によって心が壊されて――――あっ、見つけたっ!!」

キョウが叫んだ。

「どこどこっ!?」

アイは辺りを見渡す。

「……中央の広場だっ!!」

 

 

 

―――――――To be continued.

 

原案:空耶兄斗
著:霜月瑠璃

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あとがき

この作品は2001・2年頃、まだHPを開設していなかった私が友人の霜月瑠璃さんの携帯HPに掲載された小説です。
原案を私がルーズリーフ表裏1枚で書き(微妙に挿絵まで描いてた)、その紙を瑠璃さんに渡してちゃんとした話にしてもらいました。
本当に、あの時はアリガトウゴザイマシタ。
あえて携帯HPに掲載されていたまんまで載せましたので、ページ毎で段落を区切っています。

あまりにも古いんで(現在2008年)、原案書いた私も恥ずかしいんですが、
実際に文章書いた瑠璃さんの方が多分直視できないほど恥ずかしいと思いマス。
コレを書き起こしている時点でかなり恥ずかしかったです。
この頃、私達は若かったんだ。
それで全てをまとめてしまおうや(笑)

原本そのまま載せてしまおうかと思いましたが、微量修正しました。
接続語とかそこんところ

説明しきれない設定などは最後にまとめて解説します。

 

 

中篇に続きます。

 

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